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仙台高等裁判所 平成4年(行ケ)2号 判決

理由

一  請求の原因1ないし4の各事実は当事者間に争いがない。

二  請求の原因5(当選無効の原因)について

1  請求の原因5の(一)の事実は当事者間に争いがない。

2  原告らは、当選無効の原因として、まず、本件の同日選挙において、舟形町選管は、同日選挙の設備をせずに単独選挙の設備をしたり、町長選挙用の投票用紙と町議補欠選挙用の投票用紙とを同時に交付するなどしたため、選挙人の投票に混乱が生じたものであり、本件の投票所の設備及び投票方法には瑕疵がある旨主張する。

しかしながら、当選の効力に関する訴訟を理由あらしめる当選無効の原因とは、(一)当選人を決定した選挙会の構成に違法があること、(二)選挙会の決定手続きに違法があること、(三)選挙会の決定内容である投票の有効・無効の判定、各候補者の得票数の算定、当選人となりうる資格の有無の認定に違法があることであり、当選無効訴訟においては、当該選挙の有効なことを前提とするものであるから、その請求の原因として選挙の無効事由を主張することは許されないものと解される(大阪高裁昭和三〇年九月二九日判決、仙台高裁昭和三二年五月一日判決)。

ところが、原告らが主張する投票所の設備及び投票方法に関する瑕疵は、選挙を無効とする原因に該当するものであり、当選の効力を争う原因ということができない。

よって、原告らの右主張は主張自体失当といわなければならない。

3  次に、原告らは、舟形町選管が行った開票方法は、内容点検係や枚数点検係が投票用紙の内容や枚数の点検を適正に行なわなかった旨、あるいは開票立会人が票の点検を全く行わなかった旨主張する。

〔証拠略〕によれば、本件の同日選挙における開票方法は、最初に町長選挙の開票作業が、次いで町議補欠選挙の開票作業が行われたこと、まず開票係が有効投票、無効投票、疑問票、点字投票の四つに分類し、有効投票はさらに候補者別に分類して、輪ゴムを使って五〇票を一束にしたうえ内容点検係に送り、無効、疑問、点字各投票は疑問票係へ送ったこと、内容点検係は、有効投票のうち候補者別に輪ゴムで束ねられた投票用紙の内容を二回にわたって点検し、疑問票等が混入している場合は疑問票係へ送り、間違いないときは枚数点検係へ送ったこと、枚数点検係は、有効投票のうち候補者別に枚数計算機を使用して五〇票一束の投票用紙を二回にわたって確認し、それに有効投票決定票を付け、開票立会人に送ったこと、開票立会人は各選挙毎に各候補者側から各一名ずつ、選管から一名の三名で構成され、五〇票一束毎の投票用紙に疑問票や他の候補者の票が混入していないかを確認し、間違いないと判断したときはこれを選挙長に渡し、次いで選挙長は得票集計係に送ったこと、得票集計係は最終的に内容を再度点検したうえ、得票数を集計したこと、本件の町長選挙の開票について混乱や問題が生じたことはなく、適正迅速に開票作業が進められたことが認められる。

右の事実によれば、舟形町選管は右のような手順に従って内容や枚数についての点検を適正にしたものであって、原告らが主張するように、杜撰な点検をしたことを認めるに足りる証拠はない。また、原告らは、開票立会人が票の点検を全く行わなかった旨主張するが、右事実のとおりであり、右主張は理由がない。

三  請求の原因6(決定及び採決の違法)について

原告らは、当選無効に関し舟形町選管のした決定及び裁決には、いずれも事実誤認及び審理不尽がある旨主張する。

しかしながら、本件記録を精査するも、原告らの右の各主張を認めるに足りる証拠はなく、舟形町選管のした決定及び被告のした裁決につき、何ら違法な点は見受けられない。

よって、原告らの右主張も理由がない。

四  結語

以上によれば、原告らが被告に対し公職選挙法二〇七条一項に基づき被告がした裁決の取消しと舟形町長選挙における鈴木勝治の当選を無効を求める本訴請求は、その余の点を検討するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 豊島利夫 裁判官 永田誠一 菅原崇)

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